2016年2月7日、北朝鮮が「光明星4号」と名付けたロケットを発射し、人工衛星を打ち上げました。
これを、日本を含む各国が弾道ミサイルの発射実験として非難した訳ですが、そもそも弾道ミサイルとはどんな物なのでしょうか?
7月19日には3発の種類が異なる弾道ミサイルを発射していますが、何が違うのでしょうか?
人工衛星を打ち上げる宇宙ロケットとの関係性を含めて調べてみました。
ロケットって何?
化学燃料などを使って空を飛ぶのがロケットですが、意外とその歴史と飛び方の特徴は知られていないのではないでしょうか。
例えば、貴方はロケットとジェットエンジンの違いは分かりますか?
ジェットエンジンは、空気を取り込みながら燃料を混ぜて、圧縮させながら燃やすことで、強力な噴射(ジェット)を起こして飛ぶ力を得ます。対して、ロケットは自らが持つ燃料と酸素(酸化剤)を直接燃やして、発生するガスの勢いで飛ぶ様なものになります。
一言で表すと、風船を膨らませて、封をせずに放せば飛んでいくのと同じ原理です。
そして、その歴史は古く、西暦1000年頃の中国では、今のロケット花火の様な物が兵器として使われていました。
アメリカ国歌の歌詞にロケットが飛んでいる光景が歌われているのを知っている人もいるのではないでしょうか?
しかし、飛び方が不安定で実用性が低かった為に、たびたび兵器として歴史に登場しますが、1903年ロシア帝国で宇宙開発に関する議論が始まるまでは、注目されなかったのです。それから二度の世界大戦を経て、ロケットは兵器として、戦後には宇宙開発の要として成長していきます。
弾道ミサイルって何?
では、北朝鮮がよく発射していると話題になる弾道ミサイルとは何でしょうか?
1942年、後にアメリカで宇宙開発の主導者となるフォン・ブラウン博士が仲間と共に、世界で始めての弾道ミサイルとなるV2ロケットをドイツで開発しました。
それ以前も兵器としてのロケットは存在しましたが、何が世界初だったのでしょうか?
最大の特徴は、大気圏の上まで飛び上がって目標まで飛んでいく事です。
これが弾道ミサイルという呼び方の由来でもあり、宇宙まで飛んでいってから弧を描いて目標へ飛んでいく様子が、砲弾の飛び方と似ている事から弾道ミサイルと呼ばれます。
V2ロケットは観測機材を積んで初めて宇宙まで飛んだ物でもあり、戦後の宇宙開発では、アメリカとソ連の両方で研究されました。
また、ミサイルという言葉の意味ですが、本来「飛翔体」全般を示す言葉で、今では誘導されて飛んでいく物を示す事が殆どだと思います。
弾道ミサイルも誘導する機械を持っており、慣性誘導装置という「今最初の位置からどの位飛んだのか?」を調べて飛び方を修正する機器が内蔵されています。
ただ、それでも他のミサイルと比較すると、遠くから大きな弧を描いて飛ぶという性質上、命中率は低くなります。
テポドンやノドンって何?
画像引用元:第1章 諸外国の防衛政策など 第2節 朝鮮半島|防衛白書
北朝鮮のニュースを見ていると、「ノドン」や「テポドン」という変わった名前を聞きますよね。
でも、どんな違いがあるかご存知ですか?
簡単に言うと飛ぶ距離が違うのです。参考として、北朝鮮が持っている代表的な弾道ミサイルの射程を見てみましょう。
SRBM(短距離弾道ミサイル) | スカッドC | 射程約600km |
MRBM(準中距離弾道ミサイル) | ノドン2 | 射程約1,500km |
IRBM(中距離弾道ミサイル) | ムスダン | 射程約3,200km |
ICBM(大陸間弾道ミサイル) | テポドン2 | 射程約6,700km |
これを見ると、それぞれ射程がまったく違う事が分かりますね。
飛距離が違うという事は、ミサイルの大きさも全く違いますし、飛ぶ時に到達する高さも遠くへ行くほど高くなります。そして、高く遠くへ飛ぶほどスピードも速くなるので、いざという時に撃ち落とすのも大変になるのです。
特に、大陸間弾道ミサイルは隣の大陸まで届く事を目的として作られているので、地球半径の半分の距離を飛んでしまいます。
これほどのエネルギーがあると宇宙空間まで到達出来るので、大陸間弾道ミサイルは人工衛星を打ち上げる宇宙ロケットとしても使う事が出来るのです。
その為、北朝鮮の宇宙開発は同時に弾道ミサイルの開発技術の発展も進めてしまうという事で批判されているのですね。
万が一撃たれたらどうするの?
もしも、北朝鮮が日本へ向けてミサイルを発射した場合ですが、ちゃんと日本にも備えがあります。
現在、航空自衛隊と海上自衛隊に弾道ミサイルを迎撃する為のミサイルが配備されています。
前者にはPAC3、後者にはSM-3という迎撃ミサイルがあり、この種の兵器を持つ国はまだ限られているのが現状です。
そして、北朝鮮がミサイルを放つ情報をキャッチしたら、防衛大臣より「弾道ミサイル等に対する破壊処理命令」が発令され、それぞれのミサイルを持つ部隊が出動するのです。
ニュースで聞く、「空自の対空ミサイル部隊」や「海自のイージス艦が出動」という事が、これに当たりますね。
彼らは、もし弾道ミサイルが日本に落ちそうな時は、直ちにこれを撃墜する事になります。
当然、破壊しても破片が落ちてくる事が考えられます。
避難が必要な町には全国瞬時警報システム(J-ALERT)が流れて警告されるので、落ち着いて屋内に避難して下さい。
ミサイルの破片が飛んでくる場合はしっかりとした建物に避難して、窓辺に近寄らなければ怪我をする可能性を減らす事が出来ます。
自衛隊の能力を信じつつ、身の安全をしっかり確保したいですね。
まとめ
北朝鮮の弾道ミサイルは、日常とかけ離れた存在で、地震や台風と比較して被害を出した訳ではないので実感がわきづらいですよね。
でも、いざという時に避難する方法を知っていれば、安心です。
何より、日本の安全を東日本大震災でも活躍した自衛隊が守っているのですから、彼らを信じて過ごしましょう。
参考サイト