地震や水害など大きな災害が発生すると停電や断水が発生し、水洗トイレが使えなくなることもありますよね?
そのために携帯トイレや簡易トイレを備えておきましょう…というのはよく言われていますが、実際のところ懐中電灯や缶詰は用意しているものの「トイレなら最悪そのへんで出来るし…」「公衆トイレですればいいし…」なんて理由でトイレの備えはそれほど重要視していない方も多いようです。
そこで実際に被災時にトイレに困った方から「災害時のトイレがいかに重要か」体験談を伺いました。
防災対策がトイレ問題で台無し!?
被災時に飲食料備蓄はあったのに飲まず食わずだった理由
東日本大震災で被災した経験を持つSさん(男性・40代)は奥さん・娘さん・お母さんの4人家族。
「うちは比較的新築のマンションで在宅避難が出来たので、最初はそんなに困ることはないかもなぁ……なんて前向きに考えていたんです。電気・ガス・水道は止まっていましたが、防災用のラジオや懐中電灯、カセットコンロ、備蓄飲食料もたっぷりあったので、困ることはそんなにないだろうなと」
しかし、簡易トイレなどを備えていなかったSさん家族は、間もなくトイレ問題で苦しむことになります。
「最初は小だけは流さずにトイレでしていたのですが、換気扇も回すことが出来ないのでリビングにまでアンモニアの臭いがするようになってしまいました。その時はいつまで断水が続くか予測がつかなかったので、備蓄水を使って流すのをためらってしまっていたんです」
家族の中で一人だけ男性であったこともSさんの苦悩に拍車をかけました。
「年頃の娘は父親と一緒のトイレを嫌がりはじめました。異性の排泄物を目や鼻で感じるのを嫌がるのは無理もないことですが、非常時なのだからとなだめるのも一苦労で……家の雰囲気はあっという間に最悪になりましたね」
食料は豊富に備えておいたものの、口にすることはためらわれたそうです。
「食事をとればトイレにいきたくなるのは目に見えているので、あんまり食べたり飲んだりしないようにしてしまいましたね。臭いもあったので食欲もあまり湧きませんでした。せっかくの食料品の備えもトイレの備えがなかったせいで、活用することができませんでした」
ついにはトイレを引き金に健康被害まで発生してしまいました。
「母が水を飲むのを我慢しすぎて、軽い脱水症状でめまいを起こしてしまったんです。飲み水や食料はたくさんあったにも関わらず、まったく迂闊でした。幸い母の症状はそれほどひどくはならなかったのですが、最悪の事態を想像するとぞっとしましたね」
発生から2日ほどで電気が復旧し、水洗トイレが使えるようになると、Sさんはあまりの嬉しさに涙したといいます。
「マンションだと水道が止まっていなくても電気が通じていないと上層階まで水を引き上げるポンプが動かないので水が出ない……なんて初めて知りました。トイレの重要さを思い知らされましたよ。くたくたになりました」
まとめ
あって当たり前と思いがちなトイレですが、災害時には使用出来ないことも充分ありえます。トイレを備えていないと衛生面だけではなく、臭いで不快な思いをしたり、トイレを快適に使えない不安から水分や食べ物を控えてしまい体調を崩してしまう可能性も高くなります。脱水や栄養失調の症状も重くなれば命に関る可能性も出てくるのです。飲食料などの備えに比べてつい軽視しがちですが、トイレの確保は災害時の重要な課題のひとつです。
携帯トイレや簡易トイレなど家庭で準備できる対策方法もあるので、いざという時のために備えておきましょう。