大人から子供まで気軽に乗れる自転車は、多くの人にとって生活に欠かせないものになっています。日本の自転車保有台数は2005年の時点で8,700万台で、一台あたりの人口も1.5人と、世界有数の自転車保有国です 。その一方、道路整備や交通ルールの徹底などの環境整備は遅れている日本。そのため、自転車にまつわる事故が無くならず、近年では大きな社会問題となっています。
小学生の子供が起こした自転車事故の賠償金として、9,500万円の判決が出たという報道を覚えておられる方もいることでしょう。決して他人事ではありません。
今回は自転車事故とその対策についてご紹介します。
これだけは知っておきたい自転車ルール
自転車は、道路交通法上「軽車両」であり、「車」の一種です。「車」なのですから、原則として車道を走らなければなりませんし、ルールに違反すると罰則が科せられる場合もあり、最近はその量刑も重くなってきています。また、事故を起こし、相手にケガをさせてしまえば、多額の損害賠償を請求されることもあるのです。
以下は「自転車安全利用五則」と呼ばれる、基本的なルールです。いま一度、チェックしてみてくださいね。
・自転車は、車道が原則、歩道は例外
・車道は左側を通行
・歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
・安全ルールを守る
・子供はヘルメットを着用
警察庁 「自転車は車のなかま」
子供と自転車
むかしは子供が自分の自転車を持つ年齢は小学校高学年くらいでしたが、現在は幼稚園くらいから自分の自転車を持つようになりました。
たしかに自転車に乗るだけなら、練習すれば3歳児でも出来ます。
ただ、8歳頃までの子供は、成長段階として、まだ周囲を見て、冷静に状況を判断する能力がないことを忘れてはいけません。小さい子供は気になるものを見つければ、他のことそっちのけで、そちらに走って行ってしまうものです。
ですから、子供に自転車を与えるときは、親はその点を十分に配慮し、以下のような対策をとる必要があるのです。
・歩行者優先の原則を徹底させる
・13歳未満の子供は歩道を通ることができるけれど、歩行者優先は変わらない
・ヘルメットをかぶらせる
・自転車のルールについて、親が実地で具体的に教える
・小学校低学年までは、子供だけで自転車に乗って外出することは控えさせる
・自転車マナー教室などに積極的に参加する
自転車マナー教室
親が日常の中で、自転車のマナーを伝えることが基本ですが、子供が興味を示さないなど、うまくいかない場合は、地域や学校で開催されている「自転車の交通ルールとマナー教室」に参加してみてはいかがでしょう?
親子で参加できるものも多く、大人も勉強になりますよ。
また、ネットでも、わかりやすく説明してくれるサイトがたくさんあります。
お子さんと一緒に、楽しみながらチェックしてみてくださいね。
けいしちょう自転車安全教室
子ども自転車運転免許教室クイズ
高齢者と自転車
高齢者の自転車事故は、ほかの年代に比べて圧倒的に死亡率が高くなっています。自動車でも高齢者の事故が増え、社会問題化していますよね。自動車の場合は免許制度なので、更新時に公的チェックがかかりますが、自転車にはそのきっかけがありません。
ですから、身近な高齢者が自転車を運転する姿に、周囲の人が危険を感じた時は、当人に自転車の利用をやめるように話をしたり、電動カートへの乗り換えをすすめたりするなどの、働きかけが大切になってきます。
保険でカバー
自転車事故の増加を受けて、保険でカバーしようとする人が増えています。
兵庫県のように、自転車利用者は賠償責任保険に加入することを義務付けた自治体も出てきました。
みなさんが心配なのは、子供が自転車事故を起こした場合ではないでしょうか?
賠償金を請求された場合、子供には支払い能力がないため、親が賠償することになります。
たとえ事故を起こしたのが子供であっても、「子供だから」というのは、過去の判例をみても、ほとんど理由になりません。
日頃から折に触れ、子供に交通と自転車のルールを教え、チェックを怠らないのと同時に、万が一に備え、自転車保険や賠償責任保険への加入を検討するなど、事故対策はしっかり取っておいた方がよいでしょう。
個人賠償保険は自動車保険、火災保険、医療保険などにセットされている場合もあります。またクレジットカードに自動付帯されていたり、オプションで付帯できたりする場合もあります。
あらたに自転車保険に加入する前に、自分が加入している保険や使っているクレジットカードに個人賠償保険がついてないか、また後から追加できないかを確認することをおすすめします。
もし、自転車事故に遭ってしまったら
基本的には、自動車の事故の場合と同じです。負傷者がいれば手当てをし、必要であれば救急車を呼びます。事故の相手と連絡先を交換することも忘れないようにしましょう。
そして、警察を呼ぶことが重要です。自転車事故の場合、警察を呼ばないで済ませてしまうことがありますが、これは法律違反になる場合がありますし、後々のことを考えると危険です。
警察による実況見分などの手続きをしないと「事故証明書」が発行されず、保険金が請求できない場合もありますし、事故からしばらく経ってから、後遺症が出てくることもあるからです。何かを壊した場合(物損事故)も同様の対応を取ってくださいね。
以上、自転車事故とその対策についてご紹介してきました。
自転車事故の原因というと、マナーの話になりがちですが、大きな原因は日本の道路事情にもあります。
道路が狭いうえに、電柱が多く、自転車専用レーンもほとんど設置されていません。ルールを守ろうと思っていても、守るのが難しいというのが実情です。
ちなみに、自転車先進国であるオランダやドイツでは、道路が広いだけでなく、電線が地下に埋められているために電柱がなく、メイン道路には、ほとんどの場合、車道と歩道の間に完全に分離された自転車専用レーンがあります。うらやましいですよね。
驚いたことに、オランダのこれらの環境整備は、市民運動の中から生まれたものだそうです。
マナーやルールを守ることと同時に、歩行者、自転車、自動車の3つが安全に快適に通行できるような「まちづくり」を、政治や自治体に働きかけていくことも大切ですね。
まとめ
・自転車は、車道が原則、歩道は例外
・子供が自転車に乗る場合は、親は細心の注意を払う
・高齢者は電動カートへの乗り換えも検討する
・万が一に備えて、自転車保険か個人賠償保険を検討する
・自転車事故に遭った時も、必ず警察に連絡する
・安心な道路のためにも、まちづくりに関心を持つ
参考
日本損害保険協会 自転車の事故
自転車政策・計画推進機構
オランダ移住した私が目の当たりにした「自転車道」の実態