地震大国である日本では、日々の生活の中に地震対策を取り入れる必要があります。その一つとして、家具転倒防止策を取り入れるように呼び掛けられていますが、「本当に固定する必要があるの?」「賃貸物件に住んでいるから難しい」といった声も聞こえてきます。
今回は、家具転倒防止策が必要な理由と、具体的な固定方法についてお伝えします。地震から命を守るためにも、この機会に取り入れてみませんか。
家具の転倒は、被害を増大させる恐れがある
阪神淡路大震災では、建物そのものに特別な被害がないにも関わらず、死者・負傷者が増加しました(総務省消防庁サイト参照)。それは、家具が転倒することによって逃げ遅れが発生したケースや、家具の転倒によって怪我をするケースが相次いだからだと考えられています。
家具が倒れたときに頭部などの人体急所にあたると、死亡することがあります。また、家具が倒れると、倒壊した家具の下敷きになって圧死するリスク、クラッシュ症候群を引き起こすリスク、多量の出血を招くリスク、その他のケガをするリスク、身動きが取れなくなり逃げ遅れるリスク、熱源などに触れて火災が発生するリスクなど、あらゆるリスクが発生します。無事であったとしても、倒壊した家具が逃げ道を塞いだ状態になると、その場に閉じ込められて逃げ遅れてしまいます。こうした状態で火災や余震が起こった場合は、命を落としてしまうかもしれません。
家具の転倒は、ケガ・死亡・下敷きとなるリスク・逃げ遅れのリスクなど、様々なリスクをもたらします。これらのリスクを回避あるいは最小限にするためにも、家具の転倒防止策が必要になるのです。
どんな家具を固定すればいいの?
阪神淡路大震災では、震度7を観測した地域で、住宅の全半壊を免れたにもかかわらず、家具が転倒した家が6割ありました。本棚、食器棚、洋タンス、冷蔵庫、テレビ、ピアノなどの大型家具や家電が倒れる事例が多く、またただ倒れるだけでなく、中身が散乱するなどの被害も発生しました。これらの事例から、「大型家具は必ず固定すること」「食器棚は中身が飛び出さないようにすること」が必要であると考えます。
他にもカラーボックス、ラック、キャスター付きの家具、照明などが転倒・落下の被害をもたらします。しっかり固定しておきましょう。
固定方法は?
家具の転倒を防ぐためには、L字型金具とネジを使って壁に固定する方法が、最も効果的です。一方で、金具とネジを使って固定する方法は壁や家具に穴を開けることになるため、賃貸物件に住んでいる場合や、大型家電などを固定するときには不向きですよね。その場合は、耐震用ツッパリ棒(ポール式器具)を使って天井と家具を固定する方法や、耐震ジェルマットを使って固定しましょう。ポール式器具と耐震ジェルマットは、併用することでより一層の効果が得ることができます。筆者の経験では、ジェルマットははがすときに床や壁に使用した跡が残ることがありました。心配なときは、あらかじめ大家さんに相談してみましょう。
キャスター付きの移動式家具は、移動させないときはキャスターのロックを掛けます。場所を固定して使用する場合は、着脱式ベルトを使って壁や床に固定させましょう。吊り下げ式の照明は、チェーンを使って固定します。
食器棚の中の食器は、重い物や割れやすいものはなるべく下の棚に収納します。収納できない時はシンク下のスペースなど、別の場所も上手に利用してみましょう。棚の中には滑り止めシートを敷き、食器は何枚も積み重ねないことを心がけます。扉に耐震ラッチ(揺れを感じたときに棚が開くことを防止するグッズのこと)を設置する方法もおすすめです。
L字金具、耐震用ツッパリ棒、ジェルマット、キャスターの固定具、着脱式ベルト・耐震ラッチは、ホームセンターやインターネットショッピングなど身近な場所で購入することができます。地震はいつくるかわからないので、早めに対策を行ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
・家具の転倒は、死亡、ケガ、逃げ遅れなど様々なリスクの原因となる
・大型家具は金具とネジを使って固定する
・賃貸物件に住んでいる場合などは、原状回復がしやすいグッズを使って固定する
・食器棚は、中身の食器が飛び出さない・割れないようにする
参考サイト
◆総務省消防庁「家具が倒れると逃げ道まで塞がれて恐いね」
◆東京都防災ホームページ「自宅での家具類の転倒・落下・移動防止対策」