大地震発生後の自分の部屋の状況を想像してみてください。
上手くイメージすることができますか?
もし、イメージがしにくい場合は、地震に対する備えもイメージしにくくなっていることが多いです。
地震直後の部屋の状況は、実際に体験してみることでその壮絶さがわかります。
実際に地震直後の部屋を再現し、本当に必要な対策は何なのか、身をもって体感してみることの重要性と、再現の方法、着眼点などをまとめます。
大地震で、わが家の中はどうなる?
大地震を経験したことがない場合、地震後の家の中の状況はなかなかイメージがしにくいものです。イメージができないと、地震に対する対策もしにくく、どうしても後回しになりがちです。
今回は、「地震直後の家の中はどのような状態になるのか?」を知り、疑似体験をしてみることで、有効な対策を考えたり、巷で一般的に推奨されている対策が本当に有効なのかどうかなどを検証してみましょう。
まずは、こちらの記事の写真をご覧ください。
日経アーキテクチュア:2016年熊本地震 「地震直後、家族の脱出を阻んだものとは? 熊本大地震で見た自宅から避難する難しさ」
いかがでしたでしょうか?
なんとか、家屋の倒壊は免れていたものの、壁や天井の剥脱のほか、家具の転倒、割れたガラスの散乱、収納品の散乱などによって、足の踏み場もない状況でしたね。(おそらく、家屋の耐震性も低く、家具の固定などの地震対策も行っていなかったご家庭だと思われますが、何の対策も行っていないご家庭では、大地震後は大多数がこのような状況になるものと推測されます。)
これが、実際に大地震の揺れを受けた後の部屋の中の状況なのです。
危険なモノが散乱した中での避難は困難を極める
見ていただいた写真のように、あのような状況になってしまうと、家から脱出するのも非常に困難を極めます。しかも、地震の揺れで家屋が歪んでしまうと、窓や出入口が開かないということも考えておかねばなりません。
そこで、実際にリビングや廊下など、家の中の一部分で、「地震直後の部屋を再現する」ことをお勧めします。再現した空間で、果たして逃げられるのかどうかを実際に体験することで、大地震対策が「自分ごと」として捉えやすくなります。
再現の方法
①用意するもの
・大・中・小様々なサイズの段ボール箱(転倒した家具を再現したり、収納品の散乱を再現します。)
・ブロックなど細かいおもちゃ または 消しゴムやペンなどの文房具類(割れたガラスや食器を再現します。踏むと少し痛いものがベスト。刃物や先のとがったものは避けてください。)
・その他、椅子、雑誌など、障害物になるもの
②体験の方法
・用意したものを床にばらまきます。地震直後の部屋の写真のように、足の踏み場もないくらいにばらまいてください。
家具の転倒を考慮して、実際の家具が倒れたことを想定し、段ボール等を配置しましょう。
・そこを通って玄関あるいは出入り口までたどり着けるかを体験してください。
ブロック類(または文房具類)は割れたガラスや食器、段ボールは重い家具であることを想定して行うことが大切です。
③体験してどんなことがわかるのか?
・足の裏が痛い場合は、割れたガラスを踏んで歩いています。スリッパを履いたり、靴を履いたりしてみましょう。しかし、スリッパは脱げやすく、靴は玄関にしかありません。さて、どのような対策を取ればよいのでしょうか?
・段ボールが邪魔で通れない場合、大地震発生後は、脱出経路がなくなるかもしれません。家具の配置はその場所で大丈夫ですか?固定を行うべきではありませんか?
散乱しても安全に逃げる工夫orモノが散乱しない工夫
では、上記の体験を生かして、どのような工夫をしていけばよいのでしょうか?
防災の工夫は大きく2種類あると考えています。
まず一つ目は、「モノが散乱しても安全に逃げる工夫」です。
上記の③で一例として挙げたように、割れたガラスや食器類が散乱することは容易に想像がつきます。しかし、その危険な床を通ってどのように避難するのか、までは具体的に想像しにくい部分です。実際にこの体験をすると、「スリッパでは障害物を乗り越えにくい」など、危険性も指摘されています。防災対策では一般的に、「スリッパを用意しておきましょう」などという啓発事項もありますが、実際にものが散乱した家の中では、スリッパは脱げやすく危険なのです。小さいお子様や高齢者はますます危険性が高まります。
であれば、用意しておくのは靴のほうが安全性は高いということになります。
この工夫も大切な内容ではありますが、避難の前に家具やガラスのそばにいて怪我をしてしまっては意味がありませんので、安全な場所に避難することが最重要です。
もう一つは「モノが散乱しない工夫」です。
家具は固定する、棚の中のモノが散乱しないよう、耐震ラッチなどがついた扉をつける、ガラスには飛散防止用フィルムを貼ったり、常にカーテンを引いておいて大きく飛散しないようにしておく。
このような事前の工夫によって、地震後の部屋の状況は大きく変化します。そして、けがをするリスクも大きく減らすことができますので、まずは、「モノが散乱しない工夫」を優先的に行ってみてください。
大地震はいつ起こるかわからず、どうしても対策が後回しになりがちな分野ではありますが、大掃除の機会を利用して、できそうな工夫から始めてみてはいかがでしょうか?
まとめ
・大地震直後の家の中は、対策をしていないと、足の踏み場もない危険な状態になることを知っておく
・実際に地震直後の部屋を再現し、避難の難しさや危険性を体感する
・「モノが散乱しない工夫」が、地震後のリスクを大きく減らすことにつながる!
参考文献
◆未来教育:防災プロジェクト・地震からこの町を救え!」鈴木敏恵 著/学研:2005年