「家具の固定をしましょう!」と言われても、具体的な固定の仕方まで教えてくれるメディアは少ないですよね。また、一般的に販売されている「家具固定グッズ」も、使い方を誤ると、固定どころか余計に家具を倒しやすくしてしまうものもあるのです!
今回は、家具の正しい固定法にはどんなものがあり、どんな固定法を使えば効果的なのか、お伝えします。
家具固定は、日本で暮らすうえでの“作法”と心得る!
日本は言わずと知れた「地震大国」です。ところが、大地震が発生するのはごくまれな頻度であり、毎日のことではないのでつい、地震対策は後回しになってしまうというのが今の日本の現状だと思われます。
そのような現状の中、ひとたび日本のどこかで大地震によって大きな被害が発生すると、決まって
「まさか、ここで大きな地震が起きるとは思わなかった」
という被災者の言葉が聞かれます。
残念ながら、大地震は日本全国どこでも発生する可能性があります。ですが、大地震が発生しても、正しい備えを行うことで、その被害を最小限に食い止めることもまた可能なのです。
その正しい備えの一つが「家具固定」といえるでしょう。(阪神淡路大震災で死亡した方々の主な原因は、「倒壊した家屋」と「転倒した大型家具」の下敷きになることによる窒息死でした。)
地震の揺れによって転倒したり、大きく移動してしまうような大型家具は、大地震時、「凶器」となりうる可能性を秘めています。地震国・日本で安全に暮らすためには、最低限、「耐震性のある建物で暮らすこと」と、「大型家具を固定すること」が“作法”であると言ってもよいのではないでしょうか。
住まいに合わせて最善の固定法を!
家具固定には様々な方法がありますが、大きく分けて次の3種類の方法があります。イメージしやすくするために、「○○系」とネーミングしてみました。
①ネジなどで固定する「ガッチリ系」
L型金具などで、壁または床と家具をねじ止めする方法。最も固定効果が高い。壁や床に穴を開けられる場合は、この方法が最もお勧め。持ち家の方にはぜひ実践していただきたい方法です。
②粘着力で固定する「ネバネバ系」
ジェルマットや粘着タイプの固定具で、揺れを吸収したり、壁と家具を接着して固定する方法。壁や床を傷つけずに固定できるので手軽であり、賃貸住宅にも使いやすい。しかし、ガッチリ系よりは固定効果は薄いので、家具が転倒しても人に直撃しない(特に、就寝時)位置に配置換えするとさらに安心。
③すき間を埋めて固定する「ツッパリ系」
家具と天井のすき間を埋めて、家具が転倒しないようにする方法。壁や床に穴を開けたり、接着する必要がなく、お部屋に傷をつけないで済む。最もメジャーなのが「天井突っ張り棒」だが、使い方を誤ると効果は全く期待できないばかりか、天井を破壊する恐れがあり、注意が必要。
グッズは正しく設置しないと逆効果!グッズに頼らなくてもできることからはじめよう
前に述べた「天井突っ張り棒」は、家具固定グッズで最も有名ではないかと思います。しかし、正しい使い方をしないと転倒防止の効果は得られません。
天井突っ張り棒の使い方のポイントは次の3点です。
①突っ張り棒の位置は、一番「壁側」「奥側」に置く。(※一番手前に配置すると、余計に転倒しやすくなりますので注意しましょう)
②天井と突っ張り棒の間に、1枚ベニヤ板を挟む。(※天井には強度がないため、地震の際、突っ張り棒が天井を突き破ることがありますので、その予防です。)
③家具の一番下に、滑り止めマットまたは耐震ジェルマットまたは家具転倒防止板を入れる。(※いずれも100円ショップで入手できます。)
このように、市販されている家具固定グッズは手軽であればあるほど、その使い方を誤ると逆効果になるものもありますので、十分な注意が必要です。
市販グッズを使わずとも、家具を固定する目的と、家具が転倒する仕組みを理解することで、効果的な家具固定が可能になります。
家具を固定する目的は、「転倒した家具が人を直撃しないようにすること、避難経路を塞がないようにすること」です。逆に言えば、家具が転倒しても人に直撃しない位置、出入口を塞がない位置であれば、固定する優先順位は低い、というわけです。
また、転倒しやすい家具の特徴は、「重い・背が高い・上の方が重い」の3点です。家具は、揺れによって頭の方から転倒していきますので、固定する場合は家具のてっぺんを固定するのが最も効果的です。そして、重い家具は地震の揺れを受けやすいので、重量級の家具は優先的に固定しましょう。棚などであれば、下の方に重いものを入れ、上の方はなるべく軽いものを入れる工夫をするだけで、安全性が高まります。
このように、無理にグッズをそろえようとすると非常に億劫になりがちな家具固定ですが、グッズに頼らなくてもできることがあります。いつ起こるかわからない地震であるからこそ、できることから、早速始めてみませんか?
まとめ
・家具固定には大きく3種類の方法がある。持ち家・賃貸で使えるものを駆使してみよう
・家具固定グッズをそろえようとするよりも、配置換えや家具に収納する物の重さを考慮するなど、できることから少しずつ始めることが大切
・家具固定グッズは正しく使うことで初めて効果が発揮される
参考サイト、文献
◆NHK:「そなえる防災、今すぐできる!家の中の地震対策」
◆クロワッサンSpecial特別編集:「女性目線で徹底的に考えた防災BOOK」マガジンハウス