「たばこ」の害については、多くの人が知っているのではないでしょうか。
肺がんの危険要因の一つとなったり、味覚障害を導いたり、動脈硬化のリスクになったりといった悪影響があり、昔から研究されてきました。厚生労働省では、「人の観察研究のなかで、喫煙ほど多くなされているものはない 」とまで言っています。
さらにたばこは、本人だけではなく、周りの人にも悪影響を与えます。その研究が進むにつれて、「受動喫煙防止のための分煙」という考えが生まれてきました。
災害時の避難所でも喫煙は何処でするべきか問題になりますので、分煙とは何かと罰則に関して学んでみました。出展:厚生労働省「健康影響についての考え方」
受動喫煙によってもたらされるもの
「受動喫煙」とは、「その人本人が吸っているわけではなくても、その人の周囲の人がたばこを吸っていることで、その人もたばこの煙を吸い込む(そして健康被害を受ける)」ことを言います。
その影響はすさまじいものがあります。本人が1本も吸わなかったとしても、周囲に吸っている人がいれば、そのリスクは1.3倍 ~2倍 になると言われています。
一部の専門機関では、「この研究は、条件が異なっている。このような研究だけでは、受動喫煙と肺がんの因果関係を立証できない」 として反論を行いましたが、それに対しても医学的見地からの反論 がなされています。
さまざまな意見や数字のばらつきはあるものの、受動喫煙が悪影響を及ぼすことは間違いがありません。
そのため、「受動喫煙防止のための働きかけ」が生まれました。
健康増進法について
さて、このようなことから、国でも平成14年に「健康増進法」を立ち上げました。
これのなかの二十五条には、「大勢の人が利用する施設では、受動喫煙防止の対策を講じるように努力しなければならない」という一文が設けられています。
分煙とは
一昔前は、「居酒屋ではたばこがあたりまえ」「新幹線のなかはたばこが吸える」「職場でもたばこが自由だった」というところも多かったのですが、これにより、徐々にたばこの対策を考えるところが増えてきました。
そのうちの一つが「分煙」でしょう。
限られた空間でしかたばこを吸えないようにしたり、喫煙室の周りをガラスで覆ったり、分煙席と喫煙席を離したり・・・・・・といった工夫がとられるようになりました。平成24年に、「全国飲食業生活衛生同業組合連合会生衛振興推進事業 」が出した調査結果によれば、受動喫煙防止のために店を分煙にした、というところが70パーセント近くになっています。現在ではもっと増えたかもしれません。
ちなみに、「お酒を出すお店」、たとえばスナックなどは軒並み分煙率が低く、スナックではわずか8.4パーセントにとどまっています。
これからの対策、これからのたばこ
実のところ、これだけ「受動喫煙防止」が叫ばれていても、現状ではあくまでその対策は「努力義務」にとどまっています。健康増進法には罰則規定もありますが、それは「受動喫煙にかかる部分」ではありません。そのため、現状では、対策をしていない業者に対してペナルティを課すことはできませんでした。
しかしながら、2020年に東京で行われるオリンピック・パラリンピックに向けて、国が動き始めています。
平成28年10月に出されたものであり、まだたたき台ではありますが、このなかにおいて、「罰則を伴う受動喫煙防止」について検討がなされているのです。
これがどのようなかたちで決着するのかは、未知数なところがあります。
たばこの値上げや分煙が進み、喫煙者が少なくなっていっている現在ですが、さらなる規約が設けられるかもしれませんね。
まとめ
・受動喫煙により、肺がんのリスクがあがる
・現在では7割近いお店が分煙をしている
・今までの健康増進法では、分煙はあくまで努力義務だった
・しかし現在では、罰則を設けることが考え始められている
参考サイト
◆スモークフリー「守らなくてもお咎めのない『健康増進法』」
◆健康増進法 田川行政書士事務所
◆健康増進法(受動喫煙の防止を謳う)
◆厚生労働省「職場における受動喫煙防止対策について」
◆国立がん研究センター「受動喫煙と肺がんに関するJTコメントへの見解」
◆JT「受動喫煙と肺がんに関わる国立がん研究センター発表に対するJTコメント」
◆国立がん研究センター「受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍」
◆全国飲食業生活衛生同業組合連合会「分煙時代に対応した店づくりの4つのポイント」
◆厚生労働省「受動喫煙防止対策の強化について」